レッスン内容のお知らせ
ミュージカル専門ボイストレーニングセンターでは、名称の通り「ミュージカル専門」のレッスンを行っています。
日本ではミュージカル専門にレッスンを行っている施設はあまり多くありません。しかも、ミュージカルの歌唱法に精通している講師がレッスンを行っているのは、もっと少数です。
レッスンは毎回、生徒さんが用意するかスマホかICレコーダーなどでで録音して頂きます。レッスン後に反復して聴く事で、問題点や課題、どんな変化が起こったのか、何をしたら上手く行ったのか、具体的にを確かめて頂きます。またホームワーク(課題)も差し上げます。それらが次のレッスンまでの練習にとても役立ちます。
レッスンの具体的な内容は以下の通りです。
当センターに体験レッスンやご相談にいらっしゃる方がたくさんいます。その中で多いのは、「歌のレッスンは初めてだけれどミュージカルに出たいのでレッスンを受けても良いでしょうか?」と言うご質問です。もちろん大丈夫です。初めての方は悪い癖が付いていなくて上達しやすい場合があります。
もう一つ多い例は、「いろいろな先生にレッスンを受けてきたけれど上手くならなかった」と言うご相談です。
お話を聞いてみると、「もっと声をまとめて」「響きを強く」「遠くへ飛ばすように」「ピッチが悪い」「もっときれいな声で」「もっと感情を込めて」など、いろいろな事を注意されていますが、具体的な指示はほとんど見受けられないのが実態です。
「歌」や「声」はスポーツと同じように、『筋肉を使って起こす運動の一種』と言う考え方をすれば、論理的で科学的な行いであることがお分かりいただけると思います。
あなたが「全く知らないスポーツ」のチームに突然参加させられたとします。あなたがサッカーを見た事もないし、ルールも知らないとします。その状態でいきなりサッカーのゲームに出されたら、きちんとプレーできるでしょうか?
ひょっとしたら、自分のゴールにシュートしてしまうかもしれません。手でボールを抱えて走り出すかもしれません。どんなに身体能力が高くても、どんなに運動神経が素晴らしくても、『そのゲームのルールや技術』を知らなくては試合になりません。
歌は身体的な障害や脳の障害がない限り誰でも歌う事ができます。しかし、歌やミュージカルがどのようなルールで行われているか知らなければゲームにはなりません。
ミュージカルで歌う時、どんな技術を使えば良いのかを知ることが大切です。
これは多くの指導者について当てはまります。長年プレーしてきたので自分では何となくプレーできるけれど、どんなルールかどんな技術かきちんと分析していなければ生徒に教える事はできません。具体的な指導、論理的な指導ができない先生は、どうしても「観念的指導」つまり、具体的でなく何となくこんな感じで…、と言うイメージでしか教える事ができません。
これまでいろいろな学校で授業を受け持ってきましたが、とても素晴らしい素質に恵まれた学生たちが教師につぶされていったのをたくさん見てきました。ほとんどの場合、学生側の問題として処理されます。「やる気がない」「センスが悪い」「音感が悪い」「頭が悪い」などなど…です。でも本当は教師の指導方法が悪くて進歩しない場合がほとんどなのです。
この様な場合でも、「ルールや技術の基本的な考え方」をよく知っていれば、学生たちは自分が悪かった、とは考えないはずです。「歌が上手くならなかった」のではなく「上手くなる方法を教わらなかった」と考えても良いのです。
当センターではレッスンの際、歌に必要な考え方(ルール)や中心となる技術を、
具体的、論理的な証拠(エビデンス)を示してお教えしています。
発声練習とは、ドミソミド、あああああ~、と単に繰り返すだけのものではありません。発声練習の本質を理解している教師は、時間つぶしにしかならない発声練習を行いません。必ず、目的のある発声練習を行います。
発声練習には2つの役割(目的)があります。
一つ目は「ウオーミングアップ」です。声は声帯(筋肉)を振動させて出すものですが、声帯筋だけで声を出しているのではなく、声を出すためには声帯筋をコントロールする多くの筋肉が存在します。
スポーツを想像してみて下さい。運動を始める前にはストレッチを行い、軽いジョギングなどから徐々に筋肉を動かします。血管を拡張して筋肉の血流を増やし、筋肉が動きやすくするためです。また、これによって運動がしやすくなるだけでなく、急な負荷による怪我を防ぐ事もできます。
声も「筋肉を使って起こす運動」の一つですから、最初はゆっくりと軽めの発声練習を行い、声帯とその周辺の筋肉群が動きやすくなるにつれてだんだん大きく強い声を出すようにしていきます。声の高さも筋肉の負担が少ない中低音からスタートし、徐々に高い声に移行しなくてはなりません。
朝起きたばかりの時に声が出にくく、しかも低い声になるのは、睡眠によって筋肉が弛緩(ゆるむ)するからです。そんな時にいきなり大きな声や高い声を出すのは、寝起きに全力疾走するようなものです。ウオーミングアップの重要性はご理解頂けましたね。
発声練習のもう一つの役割(目的)は、技術を身につける事です。
初歩の段階ではブレスを正確に、しかも効率よく行う事から始めます。息は声の原料となるものですから、ブレスは最も大切な技術です。また、脱力しバランスの良い姿勢を習慣づけるのも大切な事です。それらを発声練習の中で身につけ定着させていきます。そして、女性ではボイスチェンジをスムーズに行う方法を学びます。やがて、声帯を効率よく振動させて、少ない力で大きな声を出す技術に進んでいきます。
発声練習では現在練習している技術を定着させ、さらに精度を高める事を行います。また、それが身についてきた段階では、もう少し難しい技術へと徐々に進んでいきます。
このように、発声練習とは「歌う前に行う儀式」ではなく、ハッキリした役割があり、教師は生徒さんの状態を把握して「どんな発声練習を行うか」を決めなくてはなりません。生徒さんも発声練習の意味を理解してレッスンを受けた方が、良い結果を出せるのは言うまでもありません。
このページの最初に書きましたように、「あああああ~、ドミソミド」などは、発声練習とは言えないほど内容のないものです。「初心者のボイストレーナー」から受ける質問で、「発声練習のパターンを教えて欲しい」と言うものがあります。その教師が得意な発声練習のパターンは、確かに存在すると思いますが、最も必要なのは『その生徒さんが必要とする発声練習』なのです。
発声練習のパターンは無数に存在しますし、その生徒さんごとに、その生徒さんが必要とする新たなパターンを考え出す事もしょっちゅうあります。
例えば、声が詰まりやすい(声帯の圧迫が強い)生徒さんには、多少息もれが起こっても、癖を取り除きやすい「R」や「F」の子音から始まるパターン。チェンジが苦手な生徒さんにはミックスボイスの音域から始めて、低い音に向かってくパターン。横隔膜の訓練に入る頃の生徒さんには「B」や「P」の子音から始まるパターン。さらに上達してきたら、低い音から高い音に5度、6度と跳躍(音が飛ぶ)する練習。その逆の練習。など、本当に無数のパターンがあります。
また、現在練習している曲の難しい部分を、簡単な音型から徐々に曲の中で使われている音型に近づけていく事など、実際の曲に活かせる発声練習はとても大切です。
発声練習は、「音声生理学」の理論を良く知った上で行う必要があります。生徒さん一人一人の状態を正確に把握して、「現在、必要な事」「次に進むべき課題」を計画的に行わなくてはなりません。
どんな練習も最終的には「舞台で歌うために活かされる事」が目的です。どれほど発声練習で良い声が出せても、本番の舞台やオーディションで良い歌が歌えなければ意味がありません。
レッスンのどの段階でどんな曲を歌うかは、とても重要です。歌の教師の中には「歌いたい曲」を持ってこさせてレッスンをする方がいます。レッスンを始めた段階でこのやり方をするのは無理があります。全ての曲に『難易度』があります。初歩の段階で難しい曲にトライしても時間の無駄です。
レッスンの過程で練習する曲には全て目的がなくてはなりません。私は女性なら最初の曲はこれ、男性ならこれ、と言うように、生徒さんに差し上げる曲を決めています。その生徒さんが持っているキャラクターは確かに存在します。たとえばレミゼのエポニーヌではなくコゼットのキャラクターの方、マンマ・ミーアのダナではなくソフィー、のような意味です。
しかし、初歩の段階ではキャラクターとは関係なく、「身につけるべき基礎的な技術」があります。1曲目ではこの技術。2曲目ではその技術の発展型ともう一つ違う技術。3曲目ではもう少しレベルの高い技術、と言ったように、曲には全て必要とされる技術があり、それを順番に練習していく事で技術が上達して行きます。
やがて基礎的な技術を身につけ始めたところで、その生徒さんのキャラクターと一致した曲を差し上げていきます。
大切なのは「どんな曲が歌いたいか」ではなく
「どんな曲を練習すれば上達するか」なのです。
行き当たりばったりで、いい加減に曲を練習していくのは時間を浪費する事でしかありません。もちろん、オーディションが入ったりすれば、そのための曲をレッスンします。曲目の選択は状況に応じて変化させる事が重要です。
個人レッスンでなければできない事。それは、その生徒さんの能力、理解力、技術の段階に応じてレッスンを進めていく事です。
私は生徒さん全員の「カルテ」を作って、毎回のレッスン内容を記録しています。そうでなければ計画的なレッスンは絶対に不可能です。医師が「カルテ」に患者さんの状態を記録して、計画的に治療し、状況が変化すれば対応できるようにしている事と全く同じです。
現在、どなたかにレッスンを受けている方で、その先生がレッスンの記録をしていないなら、多分その先生は場当たり的にレッスンをしていると考えて良いと思います。多くの生徒さんのレッスンを全て記憶しておく事は不可能だからです。
段階に応じた曲を練習するのは遠回りな気がするかもしれませんが、その方が結果的に早く目指すレベルに近づく事ができます。一挙に答えを出す事はできません。焦らず落ち着いてレッスンを進めましょう。
あなたの上達は、あなただけが努力しても達成できません。教師だけが努力しても達成できません。生徒さんと教師が力を合わせて努力すれば、きっと目指す場所に着く事ができるでしょう。発声練習も曲も、全て目的を持って取り組まなければなりません。
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